DOLL・・・ ~秘密倶楽部~

西山のマンションは
事務所からそれほど
距離を置かない場所にあった

飯岡が慣れた手つきで
部屋の番号を押す


ガチャン、ゥィーン...

分厚いガラスの扉が
重たい音をたて開く


 ただの...
 タレントじゃないんだ...


飯岡の態度や
マンションの厳重さから
そう感じた

飯岡が玄関のインターホンを
押すまでもなく
扉はすぐに開いた
まるでそこであたしたちの到着を
待ち構えていたかのように

ドアを開け出て来た男は
けだるそうに前髪を書き上げ
あたしを威嚇するように
にらみつけた


確かに
TVで見たことが
あるような...

ただ...
あたしがTVで見て
知ってる人とは
全然、雰囲気が違った


重く圧し掛かるような
威圧感を放ち
凍てつく氷のような冷たい眼差しで
あたしを見つめると男は
中に入れろという合図なのか
顎をクイッと横に流した
すると飯岡はあたしの背中を押し
中に入るよう促す


ヤダ...
コワイ...


身体を強張らせ必死に抵抗する
あたしの背中を強引に押す飯岡


 逃げられない...

 ヤダ、怖い...
 あたしどうなるの...

 どうしよう...


頭ん中がパニックになる

後悔と不安が
大きな大きな波となって
今更でも押し寄せてくる


 ヤダ..ヤダ...


西山が震えるあたしの肩を
抱き寄せた瞬間
全身に鳥肌が走った


「終わったら電話する」


西山がそう言うと飯岡は
玄関を出て行った

カチャン....

背後で冷たく
鍵の閉まる音が響いた


「こっち...」


低い声で西山は
リビングへと導く



恐怖と緊張・・・

後悔と自責・・・


身体の震えが止まらない


あまりの恐怖に玄関から
動けないあたしに西山は


「ほら、早く来い」


そう言ってあたしの首に
回した腕は驚く程 力強く
いとも簡単にあたしを
リビングへと導いた
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