残酷なラブソング
「って、急だよね。」
鼻の穴をかっ広げて
君島さんを凝視していた陽菜が
涙目で何かを一生懸命に
叫び始めた。
「んふぉうを〜・・いやいのぉ・・〜よぉ!」
「ぷっ」
愛未はそんな陽菜を見て
吹き出した。
「ひゃみいいよぉ〜・・・・!」
陽菜の言いたい事は、
よく分かる。
だって、君島さんと陽菜は
まだ会って間もない。
「でもずいぶん急じゃないのよ。」
「言い辛くて・・・ごめんね。」
愛未も悲しげに俯いた。
その後、
愛未は家庭教師のバイト
陽菜は午後の講義
があるため、
その場で別れた。
「美桜ちゃん、ちょっと・・・いい?」
「?うん。」
君島さんに付いて行く。
大学敷地内を、
南から北へ一本に貫く
レンガ道の脇に点々と設けられた
洋風なベンチに
君島さんは、座った。
私も横にそっと座る。
君島さんの膝丈まである
白いふんわりとしたスカートが
風に揺らされている。
「美桜ちゃんってバイトとか、
サークルとか・・・・
そうゆう人との出会いが多いとこに
所属してる?」
「・・・・えぇーと・・・ううん。」
もっと、なんかお別れな感じの
しんみりした話かと思ったら。
世間話かな?
でも雰囲気は、それっぽい。
「やっぱり恋するには
出会いが大切だと思うの。」
君島さんは、
ふふふ、と笑って
余計なお世話だけど、と付け加えた。
「私ね、バイトやってるんだけど、
私抜けたら店長と奥さんだけに
なっちゃうから・・・・。
どうかなぁ?代わりに・・・」
「私で良ければ!」
君島さんのバイトは
小さなパン屋さんだった。
木造の質素な造りで、
店内は狭く、
常連さんしか来そうにない
小さな小さなパン屋だ。