ナルシストの隣


「舞、もういいよ」


一言だけ言われ、頭を撫でられた。

その一言に色んな言葉や感情が凝縮されているようで、余計に心に刺さる。

私は、ごめんなさいと謝るだけで他には何にも言えなかった。

泣いている私をなだめていた社長は、最後にと言って耳元でぼそぼそと言葉を紡いだ。



「心の整理と覚悟が出来たら、僕の所へおいで?舞に見せて渡したいモノがあるから」



と…。

次の仕事へ移動しないといけないからと、私をおいて出て行った。

それが私と社長が会った最後の日の出来事。

それから約二年の時間が経ち、あの日何の悪戯か再会したのだった。



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