レンタルビデオの女
最終話
偶然か、それとも必然か・・・
自分では無意識のうちに通り過ぎた、人や物との小さな出会いがその人の人生を大きく左右することがある。

これはある一本のレンタルビデオに運命を大きく動かされる一人の青年の物
語・・・・・





達也は家に帰ることにした。

しかし、達也は何かに後押しされるようにレンタルビデオ屋へと向かっていた。
未だ心は止まったままだったが今日、この時に見ておかなければならないと思う映画があったからだ。

「Call Your Name」。

達也はこの映画を借り、家に帰るとすぐさま部屋のビデオデッキにセットした。

これまでの1年間、見ようともしなかったこの映画。 そして、おそらく彼女が死ぬ前に見たであろうこの映画。 今になってこの映画を見ることは、達也にとってはなんともいえない不思議なことであり、また、全身が震え上がるような恐怖でもあった。



「Call Your Name」が始まった。

自分の将来に希望が持てず、ヒマをもてあまし、人生をさまようだけの生活を送る少
年のささやかな初恋。
それを受け入れてくれる、何に対しても積極的に全力で取り組むヒロイン。
田舎の学校で育まれる、二人の無邪気な初恋。
生まれて初めて人生の果実を味わい、幸せを噛み締める主人公とヒロイン。
そんな中、突然ヒロインを襲う難病。
逃げられない現実の辛さに心のバランスを崩し、壊れていくヒロイン。
苦しみ戦いながら必死に彼女を支える主人公。
避けられないヒロインの死。
絶望のどん底に落ち、ひざまずいて彼女の名前を泣き叫ぶ主人公。
そして、何年もの歳月を費やし、さまざまな人や出来事と出会うことによって彼女の死を乗り越え、前向きに生きていく強さを持っていく主人公。


「Call Your Name」は幕を閉じた。
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