レンタルビデオの女
映画が終わった後も、テレビだけがついた薄暗い部屋で、達也は微動だにせず真っ黒な画面を見つめ続けていた。

そして、ふいに今まで凍りついていた達也の心が声をあげ暴れ始めた。

「・・・・みらい・・・・・・。」

達也は泣いた。
1年間思いをよせ続けた未来。一度だけ自分だけに見せてくれた未来の笑顔に。



達也は泣いた。うめき声ともなんともつかない声をあげて。
彼女に気持ちを打ち明けられず、さまよい続けた自分。
大好きだった彼女にとっての何者にもなれなかった自分への怒りや恥じらいや、絶望に。

達也は泣いた。彼女の名前を何度も呼びながら。
達也は泣きわめいた。全身で息を荒げながら狂ったように。
何時間も、朝がくるまで泣き叫び続けた。

何時間も、朝がくるまでベッドの中で一人、のたうち回った。
そして、達也は眠った。
死んだように、眠り続けた。


「幸田 未来」は死ぬ間際、一体誰の名前を呼んだのだろう ・・・・・

こうして、達也の初恋は終わった。

思いをよせる女性に気持ちを伝えることも、触れることもできず、彼女の名前すら知ることのなかった初恋。
しかし、達也にとって紛れもない、一生忘れることのない初恋だった・・・・・。
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