悪魔のいる教室
「言いたい事あんなら言え。ねぇんなら、歩け」


いっそのこと話してしまいたい。

嫌われるくらいなら話して、許される望みにすがりたい。


そう思ってはみても、やっぱり口から出てくんのは嗚咽だけで、足も地面に貼りついてしまったかのよう。

悪魔の出した2択に、私は応える余裕なんかなかった。
……なかったのに。


「ひなた」


こういう時だけ、ちゃんと名前を呼ぶなんて。

私を置き去りにしないなんて。

……ズルイ。


応えなきゃって思うじゃん。

情けない涙声なんて、絶対聞かれたくないのに。


「ごめ、なさい……」


きつく目を閉じる。

涙がまた零れ落ちるのと一緒に、瞼の裏に浮かぶ光景。

脳裏に響く、あの豪快な笑い声。


「タケティーと……話してほしくなかった……」

「なんで」

「……タケティーは……ほんとは……」


一度言葉を口にすると、もう躊躇する事は出来なくなった。


「“ほんとは”、なんだ」


悪魔が続きを促してくる。

私は、続きを話さなくちゃならない。


悪魔の反応を受け入れる覚悟なんて全然ないのに。

どう話したらいいのかさえわかんないのに。

状況が、変わってしまった。
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