悪魔のいる教室
悪魔がわかんないのは当たり前で。

態度だけじゃ伝わらない。

言葉にしなきゃ、伝わらない。


わかってんのに。

わかってんのに。


私の口は、思うように動いてくんない。

顎の骨が固まってしまったみたいに、ビクともしない。


頭の中は真っ暗。


何も言葉が浮かんでこない。

ただ延々と、さっきの悪魔の言葉がリピートし続けていた。


『こっちは迷惑してんだ』

『もう授業中話し掛けてくんな』


あぁ……。
嫌われたんだ、私。


「……なに泣いてんだ」


いつの間にか私は立ち止まってた。

街灯が近い、薄暗い場所。


俯き鼻を啜る私を見て、悪魔は泣いてると思ったらしい。

迷惑そうな、面倒臭そうな低い声が、必死に涙を堪えてた私にとどめをさす。

拭っても拭っても渇いてくれない涙に加え、嗚咽まで零れる始末。


かっこ悪い。
止まれ。止まれ。

そう思えば思うほど、勢いは激しさを増して。


悪魔は暫く黙った後、深い溜息をついた。


その溜息に、また涙が溢れる。


「……なんなんだよ、てめぇは」


ふと気配が近づき、俯いた視界に光沢を失った大きなローファーが映った。


ビビビ、とつむじ辺りから電気が走ってくる。


……悪魔が、目の前にいる。
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