悪魔のいる教室
40分程のスローペース走行を経て、原チャリは駐車場の入口付近に停車した。


地面に降り立つ。

ジンと痺れるような感覚がお尻を小走って、少しだけふらついてしまった。


家の近所であるここは、3面をフェンスに囲まれ、名前も知らない木が端にちょこんと植えられてる。

車も少ない。

今見ると、殺風景な感じがどことなく悪魔達のストリートバスケの広場に似てると思った。


「……ありがと」


言いながら、ヘルメットを返す。


悪魔は「あぁ」とそれを受け取ったものの、かぶる気配はない。

骨張った両手はハンドルじゃなく、足の上へ添えられていて。


微妙な沈黙の中、トトト、とスタッカートに震えるエンジン音が響く。


「……お前さ」


所々灰色に変色したコンクリートも、剥げかけたラインも。

いつもかなりの確率で駐車場の一番奥に停まってる、クリーム色の丸っぽい4人乗りの車も。


なんら変わりない、馴染みの駐車場。


それなのに、悪魔と原チャリくんがいるだけでなんだか新鮮に見えてくるから、不思議だ。


「あの呼び方やめろよ」

「……え?」

「あれだ。あのクソ趣味悪りぃやつ」
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