悪魔のいる教室
声と同様、不機嫌な顔した悪魔は、


「……あぁ! “悪魔”?」


そう言った私を、思いっきり睨みつけた。

つんざくようなギラッと鋭い目は、もはやビームの域だ。


「……呼びません」


私は真顔で兵隊みたいにピッと背筋を伸ばす。


……なにさ。
自分だって私の事、熊のキャラクターみたいに呼ぶくせに……。

そう思ったけどさすがに口には出さなかった。
……出せなかった。


納得したのか、悪魔はやっとヘルメットをかぶり出す。

それは夕陽を浴び、橙色に反射する。


「……ねぇっ」


呼び掛けたのは、私。


「悪魔って呼ばないから……授業中、話し掛けてもいい?」


──何言ってんだ?

声にして、心の中でツッコんだ。


……いや、マジでわけがわからん。

別に、こんな事言うつもりなんてなかったのに。


悪魔が驚いてんのは手に取るようにわかった。

切れ長な目を僅かに見開き、私を見つめる。


「……今さら何言ってんだ? お前」


返ってきた声には、困惑の色が混じってた。
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