悪魔のいる教室
「……何が?」

「お前今日、授業中話し掛けてこなかったろ」


悪魔の言葉に、私は小さく頷く。


確かに今日、話し掛けないようにしてた。

悪魔が不機嫌だった、ってのもあるけど。


「あー……あん時俺が言った事は、忘れろ」


サラリと放たれた衝撃的な一言に、私は大きく目を見開いた。

もしかしたら、眉間に皺も寄ってるかもしれない。


それでも悪魔は全く動揺せず、言葉を続ける。


「本気じゃねぇ」

「はい……?」

「本気でそんな風に思ってたわけじゃねぇ」

「……じゃぁ、なんで……」

「……ムカついたんだよ」


風が吹いた。

ザワザワと木の葉が騒ぎだす。


橙色に染まった悪魔の髪はワックスのせいか、あまりなびかない。


「あん時……お前が俺に話し掛けてくんのは、ただ単に竹田が嫌いなだけだったんだと思った」


その時の心境を思い出したのか、声のトーンが低い。


「1番ムカついたのは、思い上がってた自分にだ」


『お前の意見、押し付けんじゃねぇよ』

あの時の悪魔の言葉が、脳内に響いた。


……確かに、数学のおっさんが来る度に悪魔に話し掛けてたのは、私が数学のおっさんが嫌いだったからで。

自分の好き嫌いを悪魔に押し付けてたのは、紛れもない事実。


──だけど。
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