悪魔のいる教室
50分にわたる数学の授業を終え、昼休みがやってきた。


最近、私達は廊下側の涼子の席で食事をしている。


それは昼休みも教室にいる確率がグンと高くなった悪魔を見て、

『お弁当を食べる場所を変えよう』

私達の中で1番悪魔の存在を恐れている由美が、そう言い出したからだ。


そうやってあからさまに悪魔を避けるのは気が引けたものの、何も言えなかった。

私も以前なら、由美のように恐がっていたと思ったから。


……ううん。

本当は、ただ単に反論する勇気がなかっただけかもしれない。


「今日はいないね」


涼子はそう言って、串刺しのミートボールを1つ頬張った。

私なら一口で一気に2ついくとこだけど、彼女にはそんなガッツキ癖はないらしい。


「だねぇ」

「授業終わってすぐ出て行ったよね」

「あ、そうなの?」


涼子と由美の主語のない会話を聞きながら、ご飯を摘んで口に入れるという機械的な動きを黙々と続ける。


話題になってんのは自分の彼氏だとわかってるけど、だからといって会話に参加する気はない。

むしろ自分に話を振られんのを避けてる。


だって私は、悪魔が今どこで何してんのかも何を考えてんのかも、全然知らないから。
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