悪魔のいる教室
「あ、栗原くん」


頼りなさげにふにゃりと微笑む彼は、このクラスの学級委員長。

坊主頭に黒縁メガネが、古き良き昭和の学生の風潮を高めている。……ような気がする。


「あの……」

「うん?」


そういえば、栗原くんと話すの初めてだ。

2年生になってもう1ヵ月以上経ったけど、一度も話した事がなかった。

……ある意味悲しいな、それ。


メガネの奥でウロウロ泳いでる眼球を見つめながらそんな事を考え、一体何を言われるのかとドキドキふくらんでいた気持ちは──


「……佐久間くん、どこにいるかわかる?」


──……当然といえば当然な話題に、水分の抜けきった水風船のようにショボンと萎んだ。


そりゃそうだ。

栗原くんが私に話し掛けてくるネタと言ったら、事務的なもんしかないに決まってる。


気分が落ち込んだのはそれが理由じゃなくて、なんていうか……今まで避けてた質問をされたからで。

悪魔の事を何も知らない、と実感してしまうのが寂しいのかもしれない。


「ううん、わかんない」

「あ、そっか……」

「ごめんね。なんか用事?」
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