悪魔のいる教室
確かに悪魔は暴力的で愛想もクソもねぇ奴だけど、理由もなく誰かを半殺しにしたりなんかしない。

ぶっきら棒で冷たいけど、真っ直ぐな強さを持ってる。


私だって悪魔の事をよく知ってるわけじゃない。

けど、みんなが想像してるよりはずっとニンゲンらしい男だと思う。


先入観のせいで中身をちゃんと見てもらえない悪魔は、どんな気持ちで毎日を過ごしてるんだろう。

悪魔にとって、この教室はどういう場所なんだろう。


教室の端っこらへんの過疎地。

静かにたたずむ机に悪魔の残像が浮かんで、キュッと胸が締め付けられた。





「あの……熊谷さん」


お弁当を食べ終わった時、頃合いを見計らったかのように名前を呼ばれた。

授業の始まりと終わり、毎回のように聞いてる声。


私は後ろを振り向いた。
< 174 / 201 >

この作品をシェア

pagetop