悪魔のいる教室
「お、お金じゃん……」


悪魔が握ってたのは、お札だった。


しかも、諭吉様。

お正月以来ご無沙汰の諭吉様。

お久しぶりです!
……じゃなくて!


“タツキ”ってのは“タツ兄”の名前。

こんな大金をタツ兄に渡して、悪魔はなんのつもりなんだ?


ってか、なんでこんな大金持ってんの?

これが今時の高校生の普通なの?

私、毎月のお小遣い3000円なんだけど……?


「な、なんで……こんな……」


なんかヤバイ事してるような気がして、声のボリュームをギュッと絞って無意識に周りをキョロキョロ確認してしまう。

悪徳取引してる時の気分って、こういうもんなんだろうか。


それに引き替え悪魔は落ち着いたものだ。


「タツキには世話んなったから」


そう言ってお札を4つに折り畳むと、また私に差し出した。

『早く受け取れや』って顔つきで。


その迫力に負けて、私は怖ず怖ずとお札を受け取る。


お札は微妙に生温かくて、一気に実感が沸き上がってきた。

クラスメートの他愛ない会話が、私に禁忌を感じさせる。
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