それでもわたしは生きている
ピンポーン


扉を開けて、私とソウタを見た時の母の顔は今も忘れない。


家に入ると、新聞に顔近付けて何かを必死に読みあさっている義父がいた。

顔を上げて私達を見た時の義父もまた、なんとも言えない顔していた。


新聞は、ドンドン増えていく死者の名前が毎日更新されて届けられていた。

その小さな字を、一生懸命私達の名前が載っていないことを祈りながら、義父は読みあさっていたんだ。

深夜に付けっ放しのテレビからは、単調に読み上げられる名前、名前、名前…

画面も、名前、名前、名前…


この時、ここに名前が出てこない事を、祈って祈って祈って、画面を見つめ続けていた人達がいったい何人いただろう…



しばらく私は父母の家にいた。

といっても、1ヵ月程だ。

元の家がどうなるのかも分からないし、元の街に住む場所があるのかも分からない。

身動きがとれなかった。



ソウタが産まれて、こんなに何日もノンビリしたことはない。

勿論、仕事も今はない。
家事は母がしてくれる。

私は夜になると、ちょこちょこケンジと会っていた。


外泊もした。


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