それでもわたしは生きている
と言ってくれた。


泣きそうになった。
後ろ髪を引かれる思いで仕事へ向かう。

ソウタは、幼いながらに我慢してくれている。
決して私が仕事へ行くのを邪魔はしない。
少し、自分の気持ちを静かに私に伝えただけだった。

辛いのは…
私だけじゃない…
我慢してるのも私だけじゃない。

この親子は、これから先も、色んなことを我慢して生きていかなければならない。



保険の営業先の企業にたまたま出張に来ていたケンジに出会ったのは身も心も疲れ果てていた時だった。

本当にその日1日限りの出張で、もう来ることはないであろう、たった1日の偶然。

その頃の私は幾つかの企業を担当していたので、毎日同じ企業には通わなくなっていた。

だから、後から考えると、あの偶然ってなんだったのかな、なんて思う。


「あれ?初めまして!アンケート書いてもらっていいですか?」

「え?あ、いいですよ!いいですけど、僕今日しかここおりませんよ」

「そうなんですか?なんや、話聞いてもらいたかったわぁ」

「夜でも良かったら仕事終わってからきますよ、車で30分位やし」

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