ありがとう、
ううん。

地味だった私、と変わらずみんなの中心で笑う彼。


もうこれで、堂々と彼の前を過ぎることができる。

そう思うと、少しくすぐったい気持ちになってきた。


「でも、彼、志乃のこと見てるよ?」

小百合は私の肩を軽く叩いて、話しかけることをせがんでいる。けれど、私にはそんな勇気がない。


・・・まだ。


「そんなことないよ。」

私は小百合の期待を軽くあしらい、精一杯の冷静を装って自動販売機の前を過ぎた。
< 2 / 20 >

この作品をシェア

pagetop