魔王さま100分の2
「傷を負ったわけじゃない、じきに戻る」
キーヤは、顔をあげてそれだけ答える。
どう見ても、自分より重傷を負っているシルキス。
……治療が必要なのはおまえだろう。
そうかなりはっきり告げたつもりだが、
シルキスは、破片が刺さったままの腕を造作なく動かして、軽く流す。
「きつければ眠ってもいいぞ。寒いなら上着を貸してやろうか」
「無用だ」
「そうか、欲しいと言うなら今の内だぞ」
シルキスは、キーヤの前で浮き袋入りの上着を脱ぐ。
キーヤに無理やり貸し与える為でない。
シルキスは腕だけでなく、全身に破片を被弾していたからだ。
穴だらけの上着を外すと、下からは真っ赤に染まったシャツ。