魔王さま100分の2
それは、そうだ。
キーヤは思う。
どうして自分は、シルキスの傷が両腕だけだと思っていたのか。
どうして、あの散弾を一度に片腕づつだけで防ぎきったと思えたのか。
手綱を握る自分から見えたのがシルキスの両腕のみだっただけで、
その他の全身を盾にして自分と天馬を守っていたと、至極当然のことを想像もしなかったのか。
それは……、
「ヘナ、安全圏に出たら信号弾を使って合図。それで連絡が取れなければ、僕が天馬で出る」
「……はい」
自分以上にシルキスが負って当然の傷だと、口にも顔にも出さないから。
なるほど……、これは確かに腹が立つ。
腹が立つので、
「こらっ、シルキスっ!おまえ、私に何か言う事あるんじゃないか?」
シルキスの膝を蹴とばして怒り始める魔王さまを、いつもの十割増しで応援することにする。