魔王さま100分の2
「嫌がられても困るので面白いのはいいですが、罰ってなんですか?」
「おまえ、まだ私に『助けてくれてありがとう』と言ってないだろうが」
「助けてくれたのはヘナだと聞きましたが?」
「誰が言い出したか、分かっているそうだが?」
「あうっ、あうっ」
「だいたい今痛いなら、初めから食わない努力をしろ。食らった時点で既に痛いだろう」
「傷を無目的に抉られるのは、傷をつくるときの10倍は痛いです」
「目的ならあるぞ、シルキスを泣かすという目的がな」
「泣きます、すぐ泣きますから、とりあえず今遊ぶのはやめてくださーい」
などというやりとりをしている間に勇者の本能が告げる、幽霊船の追撃をふりきった感触。
ふりきったので、シルキスはこのまま魔王さまと戯れる。
おそらくだが、自分が幽霊船に追われている姿を見せて、魔王さまを泣かせてしまったはずだ。