幼なじみの執事
「あたし谷水 千嘉(たにみず ちか)っていうの。よろしくね」
髪は肩ぐらいで、ゆるくかけたパーマがふわふわ揺れてる。
差し出された手は、淡いピンクのネイルに彩られていた。
「坂城葵衣…です」
指先だけ触れるような、軽い握手をしたときに思った。
あたしこの人、苦手だ……
嫉妬とか抜きにして、なんかガツガツした感じが嫌。
それに、そもそも何でこの人があたしの家にいるわけ?
それを目線で絢斗に訴えると、すぐに気づいたらしい。
「本日の葵衣様の家庭教師を、千嘉にお願いしたんです」
えっ?!…なんで?
「わたくしは理数系は得意ですが、文系は少々苦手ですので…」
「その話聞いて、じゃあたしが葵衣ちゃんに教えるって言ったの!嫌かな?」
嫌に決まってんでしょ?
けどこの状態で断るのも、妙に子供っぽくて悔しい。
あたしは余裕の表情を見せた。