幼なじみの執事
「こちらもう、おさげいたしますね」
朝食を終えたお皿をさげようとする絢斗に、声を掛けた。
「ねぇ、今日出掛けるから。夕食もいらないと思う」
「どちらへ?朱里様とですか?」
「映画に行くの…でも、相手は朱里じゃない」
その瞬間、絢斗は怪訝な顔を見せた。
「…緑川様ですか?」
「仁でもない…誰でも構わないでしょ?絢斗にそこまで報告しなきゃダメ?」
少しイラついた声を出したあたしに、絢斗は低い声で答えた。
「申し訳ありませんでした。では葵衣様がお出かけになったあと、わたくしはお休みをいただいても?」
「あっ…うん」
自分から言ったことだったけど、あんまり簡単に冷たくあしらわれると…
やっぱり哀しくなる。
こういう時の無防備な気持ちは、隠そうとしても隠しきれてない想いを実感するの……
絢斗が好きだって。