あの時に戻れたら【短編】
「いや……どうしたもこうしたも…私は今元気なんだけどね、娘が身体を調べろって言うから…。なんかデカイ病気になってないかなと思いまして。」

先生も看護婦さんもきょとんとしてお父さんを見ていた。

「何か最近不調な部分がありましたか?」


「それが……ないんですよね。」


看護婦さんは今にも笑い出しそうなのを必死に堪えていた。先生は少し困りながらも「一応」って言って一通りの検査をしてくれる事になった。



私は待合室で座って待って、お父さんは検査に向かった。まだ何だか腑に落ちない顔をしてるお父さんは検査服に着替えると少しこっちをチラッと向いてニヤと笑ってまた診察室に入って行った。少し楽しそうに見えた。


お父さん…ごめんね。今からお父さんは、癌の宣告をされるんだよ。



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