あの時に戻れたら【短編】
おばあちゃんは畑から帰って来たおじいちゃんと、久しぶりに来た私の為にお昼ご飯を作りに台所へ行った。

おじいちゃんは「孫が来たのに汚くちゃ悪い」って砂の付いた顔を擦りながらお風呂に行ってしまった。


居間に1人になった私は周りをキョロキョロ見ては思い出にふけていた。


「懐かしい。あの座椅子…まだ小学生だった頃に赤ちゃんだった渉を乗せて揺り篭みたいに、遊んでたら壊れちゃったんだ…」

当時、泣きながら謝る私におじいちゃんは「謝れる子は利口な子だ。背もたれが壊れても、壁にもたれかけさせたら椅子の役割は果たせるぞ」って言って許してくれた。おばあちゃんも「これも思い出だね」って笑ってくれた。そして、少し汚れた座椅子は今でも同じ場所に置いてある。あの頃と何も変わらずに。




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