あの時に戻れたら【短編】
止まってしまった古時計…私は昔よく中の振り子に触りたくて踏み台を持って来ては、硝子扉を開けようとしてお父さんに怒られた。

「お父さんの大事な時計だから壊れたら困るんだ」

って言ってたよね。お父さんも昔と変わらず時計を大切にしてたんだ。


お父さんがいなくなった今、時計を触っても怒る人はいない。私はニヤっと笑いながら踏み台を探した。廊下の隅に置いてある踏み台を見付けると居間に持って来て、時計の下に置いた。こんなに長い間、何度もこの家には遊びに来たけど、この時計にまともに触れた事がなかった私は少し子供に帰った気持ちだった。



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