それは、輝く星空のように
「お前の偽名だろう」


「・・・はい」


大切なひとを忘れないように名乗った名前。


「ですが、自分は何も知りません。本当です」


仮に智徳が犯人だとしても、そんな間抜けな真似はしない。


「他に心当たりはあるか?」


「ありすぎて特定できません」


「・・・・・・」


権造は値踏みするように智徳を見る。


「羽田。
 この世には二種類の生き物しかいない」


「・・・・・・」


「人間と、豚だ」


何度も聞かされてきた。


金を使うのが人間。


金に使われるのが豚。


「中本組という豚を使って金を集めたなら、ナナオという奴は人間だ」


「・・・・・・」


「お前の働きには期待している」


「・・・わかりました。すべての心当たりを当たっておきます」


「おう」


徹底した利欲主義者の権造にとって、大半の生き物は豚だ。


もちろん、智徳も例外ではない。


せいぜい、使い勝手のいい豚というのが妥当なところだろう。


「頼んだぞ、羽田」


「ええ・・・」


豚にできることは、働くことだけだ。


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