秘密~「ひみつ」のこと
でも、
あたし、
その優しさに甘えちゃいけないって、
必死に気持ちを、
奮い立たせてた…

「あの歩道橋から、サキを探していたの…あの日も、丁度下を高校生が通って、サキも今年は高校一年だなって、毎年毎年、歳を数えて、その年頃の子供を見ると、その中にサキを探してた…」

「今日、会えたじゃないか!」

会えるなんて、
思ってもみなかった。
会えるかもって、
希望だけで十分だったの…

「あたし、サキに会わす顔なんてない。だって、なんて言えばいいの?あたしは、あなたを捨てた母親ですって?」

「今まで君は充分苦しんできた。サキ、あの子はその痛みを分かってくれるよ。そして、これから、本当の家族になればいいんだ!」

「いいの?それでいいの?」

本当に、
それでいいの?

信じていいの?

「いい、それでいいんだ。僕は君もサキも、そして生まれてくる子供、みんなを愛してる。みんなで幸せになろう!」

顔を上げると、
優しく笑う翔一さんがいた。
嗚呼、
あたし、
ここに居ていいの?
翔一さんの側に
居ていいの?

翔一さんは、立ち上がった。

「サキを呼んでくる。ユイ、逃げちゃいけないよ!」




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