秘密~「ひみつ」のこと
咲はしばらくして、
翔一さんに抱きかかえられるように
部屋から下りてきた。

やっぱり、
ショックだったんだ…

あたしを憎んでいるかも…

心が怯えた。

でも、
咲は立ちすくむあたしを見ると、
駆け寄って抱きついてきた。

「おかあ、さん?」

ホントにいいの?

「ごめんね、サキ…」

母と同じ、
あたしも咲に、
ただ、
謝ってた。

その言葉の他、
口にする言葉が、
見つからなかった。

無力な自分。

犯してしまった過ち。

取り戻せない時間。

「あたし、幸せ。お母さんが二人もいるのよ!」

サキの涙で濡れた瞳には、
希望が映っていたね…

サキは、
こんなあたしを許してくれるの?

「サキ…」

あたし、
サキの大きな身体を
しっかり
抱きしめた。

「優子が聞いたら、びっくりするぞぉ~あいつ結構運命論者だから。『あたしが、サキとユイのキューッピットよ』なんて、言い出すかもしれないぞぉ」

翔一さんが笑ってあたし達を見つめる。

あなたの笑顔があたしに伝染したの?

あたし達、
家族になれるかな…

ちょっぴりの希望に、
口元が緩む。







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