迷子のコイ
「・・・・・じゃあ俺、行ってくるけど」


「・・・うん、わかった。
 頑張ってね!」


7月27日、快晴。

雲がひとつもないほどに
青く澄みわたった、きれいな空。

いつもの夏休みなら
こんな晴れた日を、どんなに喜んでいただろう。


「・・・ゴメンな。
 オマエひとりにするけど・・・」


「ううん! 大丈夫だよ! 
 それよりサッカー、
 1回戦で負けたりしたら怒るからね!」


俊哉は今日から
サッカーの試合で、地元を離れる。


中学最後の夏の、最後の大会。


本当ならアイリとふたりで
サッカー部の応援に行くはずだった、今年の夏。


あんなことさえなければ
今この場所に、カケルだっていたはずなのに。


「・・・アイリは?」


カケルからの言葉に、
私は首を横にふる。

あの忌まわしい事件が起きてから
10日が経った。

カケルの様子は
サッカー部の顧問から
部員たちへと伝えられ、
それをカケルが、あたしに教えてくれていた。


けれど詳しい様子は何もわからずに
『手術が成功したこと』と、
カケルが『意識を取り戻したこと』、
結局それだけしかわからなかった。


カケルを刺した『タカ』は
翌日、繁華街でフラフラしてたところを
警察にとり押さえられた。


そしてアイリは、
カケルが刺されたあの日から
毎日とり憑かれたように
カケルのいる病院へと通っていた。
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