迷子のコイ
「いえ・・・あたし・・・」


その時、ガタッとリビングから音がして
その音に、あたしと彼女は思わず反応した。


色の抜けた、赤い髪・・・
白い肌。


2年前の
あたしの記憶の中とは全く違う
『彼』が、そこにいた。



「オマエ・・・」


でも、声は同じ。
・・・なつかしい、カレの
低くかすれた、ダイスキな声・・・。


あたしを見たとたん
ズカズカとやってきたカケルは
あたしの手を乱暴にとった。


「来いよ!」


そんなあたしたちに驚きもせずに
カケルの彼女は
ひらひらとあたしに手を振った。


「アイリ・・・ちゃん?」


「え?」


「・・・そう、やっぱり・・・」



彼女の顔つきが、急に険しくなった。


「やっぱりあんたが、『アイリ』か・・・」


カケルに腕をつかまれて
玄関を出て行くあたしに彼女は言った。


「またね・・・『アイリちゃん』」


出会った時とは違う。
『笑顔』をカオに はりつけて――――――――。







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