迷子のコイ
「えっ! オマエ、カケルに会ったの?」


昼休み、あたしは俊哉を呼び出して
この間やっと、カケルと会ったことを伝えた。


・・・キスされたことは言わなかったけど。



「・・・どーだった?」


壁にもたれながら、心配そうに俊哉が見た。



「うん・・・なんか、俊哉の言うとおりだったかも。
 もうあの頃のカケルじゃ、なくなってた」


「・・・そっか・・・。
 ・・・アイリ、オマエさ・・・」


「ん?」


「カケルのこと、吹っ切れたのか?」


「・・・・正直よく、わかんない」


あたしは俊哉に、
いまの自分の素直なキモチを伝えた。


俊哉に
 
『吹っ切るために会いに行って来い』って

そう言われた。


そのときは、あたしも本当にそう思ったの。


でもね、そう言いながらも
本当は心のどこかで
カケルに会いさえすれば、
あのころに戻れるってタカをくくっていた。


『じゃあな、早坂』


『早坂』って、カレはあたしを呼んだ。


そう呼ばれたとき、はっきりわかったの。

カレはあたしを、排除したんだって。



カレが変わってしまった発端は、きっとあたし。
あたしがカレから、
サッカーも笑顔も奪ってしまった。

カレの母親に罵られたことを思い出す。

言われた言葉は、今も胸の奥に突き刺さっていた。
ずっと抜けないトゲ・・・。

でもきっと、それだけのことを
あたしはカレにしてしまったんだ。











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