迷子のコイ
「あのっ すみません!
 気づかなくって!」


彼女はあたしに謝った。


「ふふ、いーわよ、別に。
 これだけ変われば、わからないでしょうから」



私は務めて彼女に優しく笑いかけた。


「・・・夜、勤めてるんですか?」


大きく開いた胸元を気にしながら
彼女は言った。


「・・・そうよ?」


「・・・あのっ、カケ・・・
 佐伯くんは、何も言わないんですか?」


普通の家庭で育った女の、訊きそうなことだ。
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