鬼畜王子の飼育方法
「……なっ!」
視線の先に在ったものに、思わず我が目を疑う。
ちょっと待て。
嘘でしょ?
なんで……
なんで志季が!?
驚きのあまり声すら出なかった。
自転車置き場の壁に寄りかかるようにして、志季がこちらを見ているのだ。
しかも、何やら楽しそうに笑いを浮かべながら。
──志季。
アンタはどこまで鬼畜なんだ。
改めて失望する。
普通、この状況を目にしたら助けるのが普通だろ!
しかもありえないことに、ヒラヒラと手を振りやがった。
怒りでワナワナと震える拳。
「──オイ、聞いてんのかよ」
「ききき聞いてます、聞いてますってば!」
ジリジリと壁際まで追いつめられ、気づけば、完全に逃げ場を失っていた。