†クローバー† ~4人の小さな恋物語~
 今までこぼれなかったのが不思議なほど、次から次へと雫が落ちてゆく。


 悠が振り向いたなら、すぐに泣いていることがバレてしまう。

 悠はきっと、それに罪悪感を感じるだろう。それだけは、ダメだ。


 私は、悠のいる方へ背を向け、走りだす。

 1度も振り返ることなく、ただただ、走り続けた。


 周りの景色なんか、全く見えなかった。


 気がつけば、いつの間にか家まで来ていた。

 誰もいない家に、半分飛びこむようにして入る。

 靴を脱ぎすてて、2階の自分の部屋へと向かった。


 バタン、と扉を閉めるのと同時に、足の力が抜けるのを感じた。

 座りこんで、泣きじゃくる。


「悠、ねえ、悠…っ」


 かすれた声で、愛しい人の名前を呼ぶ。

 けれど、それに答えてくれる人はいない。

 いつものように、笑顔で振り向いてくれる人はいない。



 幼なじみでいたなら、ずっとつながっていると思っていた。

 でも、気づかないうちに、悠はずっと遠くまで行ってしまっていて。

 どんなに手を伸ばしても、もう、悠には届かない。


「大好きだよ…悠…!」


 届かない想いだけが募っていく。

 言葉で伝えたところで、それはつながるものではなかった。


 分かりきっているはずなのに、知っていたはずなのに、涙は止まらなかった。
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