妹なんていらない
千鶴は弟のことが好き。


なら、簡単なことだ。




「それなら、会いに行けばいい。

遠慮なんかしてんじゃねぇよ。

好きな家族と一緒にいることをためらってどうすんだ」



「………で、でも私…どうしたらいいか…」



「どうしたらいいのかわからないってときはな、たいていどうしたらいいのかわかってんだよ。

ただ、その選択をするだけの勇気がないだけでな」



「勇気…ですか………」



「逃げるな。

お前は強いだろ?」




そこまで言って、千鶴は黙り込んでしまった。



一方、俺はというと、慣れない言葉、というか、妙に偉そうに語ってしまったために何だか気まずくて黙り込んでしまった。



最近思うんだが、俺は結構苦労性なんじゃないだろうか?


美波のこととか、千鶴のこととか、ああ、雨宮も少しあるな。



あんまり面倒見がいい方じゃないと思うんだがなぁ。




すると、千鶴はうつむいていた顔を上げ、俺を見た。



自然、千鶴は俺を見上げる形になる。
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