妹なんていらない
嵐のように過ぎていく舞台。



美波に言われてロミオのセリフを全て覚えていたわけだが、まさか本当に言うことになるとは思わなかった。



それに加えて原作を読んだことがあったのも大きかっただろう。


おもしろ半分だったが、興味をもって良かったと思う。




「すごいですよ、先輩!

ぶっつけ本番なのに完璧じゃないですか!」




劇の合間、舞台袖に控えた俺に、興奮した様子で食いかかる千鶴。


他の後輩たちもあちこちで賛美の声を漏らす。



「演劇歴長いから………な」



誰にも聞こえない声で理由をつぶやき、俺は苦笑いする。



「応援してますね!

がんばってくだ…」



ピリリリ…ピリリリ…



「………すみません。

携帯、マナーモードにするの忘れてました」



「なんか…一気にやる気そがれたわ」




いや、まあこれはこれでリラックスできるからいいだろう。



俺は苦笑いを浮かべながら舞台へと向かった。
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