妹なんていらない
その後も、劇は順調に進み、ようやくラストシーンを終えた。



ああ、結局俺はどこまでも演劇男なんだと思ってしまう。



嫌だ嫌だと思いはするのだ。


だが、そんな気持ちも結局、観客からもらえる拍手で喜びに変わってしまう。



最後に挨拶、というわけで隣に立つ美波に目をやると、今まで見たことがないような満足げな顔をしていた。



………こいつ、こうして見てみると、結構かわいい………のかもしれないな。



と、美波が俺の視線に気づいたらしい。




「………何見てんの?」



「別に、何でもねぇよ」



「ふうん………

なんか、やらしい目で見られてた気がするんだけど」



「そりゃ間違いなく勘違いだ。

俺がお前相手に欲情するとでも思ったか………って、おい、ちょっと待て。

何で身構えて………」



ゴンッ!








………あのさ、観衆の前でジュリエットの格好をした女がロミオの格好をした男を殴るってどうよ。
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