妹なんていらない
美波の頭を引き寄せるようにして抱きしめた。


そんな俺に、美波は嫌がるような仕草一つなく、また涙を流した。



「うっ…うっ………」



「支えてやるって…簡単なことじゃないよな…

難しいよな…

お前…ほんとすごいよ…」



「ちがっ……私…何もして…あげられてない…

支えて…ぐすっ…あげられてない…」



「俺は支えてあげようとすらしてなかった。

千鶴から逃げてた。

でも、お前は向き合ってた」



美波の頭を撫でてやる。



いつも高飛車で、傲慢で、我が儘ばかり。



そんな美波はこんなにも弱くて…泣き虫で………



…こんなにも、強い。




「俺は向き合う。

千鶴と、ちゃんと、正面から向き合う。

千鶴を支える、支えてみせる。



だから…そんな顔すんな」



俺は美波を抱きしめていた腕を離すと、美波の涙を拭いてやった。


美波は少し恥ずかしそうな顔のまま、黙って俺を受け入れていた。
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