妹なんていらない
「………なあ、美波」



俺は重い口を開いた。


美波は赤く腫らした瞳で俺を見る。




「俺はさ、母さんが死んだとき、ぼろぼろ泣いてたんだよ。

もう、男のくせにどんだけ泣くんだってくらいにさ」



うっすらと記憶が蘇る。


あの日は…そう、今日みたいな秋晴れだった。



「悲しくて…悲しくて…

何でこんなことになるんだって…

ふざけるなって…


人間って変だよな。

人の死には逆らえないって分かってるのに、それでも…そのことがあまりに理不尽なことに思えてしまうんだから」



「純一は…お母さんの死を受け入れられたの…?」



「まあ…多分な。

俺は、弱いけど…その分、みんなが支えてくれたから」




そうだった。


俺には親父がいた。


友達がいた。


俺を支えてくれる人がいた。




だから………
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