妹なんていらない
少し間が空いて、口を開く。



「わけわかんねぇ。

お前、そんなんで本当に生きていけると思ってんのかよ」



「思ってないよ。

私は死ぬかもね」



「お前………

ふざけるのもいい加減にしろよ?」



思わず口調が荒くなる。


つい、雨宮を睨んでしまった。




「ふざけてる?私が?
それは高橋くんの勝手な考えでしょ?

私は本気で言ってるのに、それを真面目にとらないのが悪いんじゃない」



「本気に聞こえないんだよ。

いつもいつも冗談ばかりじゃねぇか」



「そうかな?

私はいつも本気だよ。
本気で言うし、本気で動く」



「あのな………」




本当につかめないやつだと思う。


どんなに近づこうとしても、こいつはそれをよしとしない。


近くにいるように見えて、いつも離れた場所から俺たちを見ている、そんな感じ。


だからこそ、こいつの考え方が俺と違うのは前々から分かっていたし、どこか感心していた。




けれど、今回は違う。


俺は、雨宮の言葉が全く理解できない。


視点を変えるとか、そんなレベルじゃない。


まるで、答えのない問題を解かされている、そんな気分だ。
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