妹なんていらない
「先生の差し金?

高橋くん、先生に媚びるつもり?」



進路、と口にした途端、口調が荒々しくなる。



やはり、こいつの中で進路の話はタブーらしい。



「先生は関係ないし、頼まれてもいない。

俺がお前のことが気になったから聞く、それだけだ」



「ふうん………」



すると、雨宮は体を起こした。


俺も立っているのがつらくなってきたので適当に床に座る。



すると、雨宮はベッドに座りながら、俺のことをじーっと見つめてきた。



「高橋くんは私の進路について何か聞いた?」



「ああ、だいたいはな」



「そう………なら、何も話すことはないね。

高橋くんが知っていることが私の進路だから」



淡々と言う雨宮。



相変わらずこいつの真意は読めない。


美波のような分かりやすさがなく、いつもどこか自分を偽っている。


そういう点で、俺は素のこいつを見たことがない。



だから、こいつがわからない。



「………大人になんてなりたくない、ってなんだよ。

お前、本気でこんなこと言ってんのか?」



「そうよ。

私は本気でそう思ってる。
そうありたいの」
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