妹なんていらない
雨宮は座った体勢から背中を倒し、ベッドに横になった。



そして、両手を広げ、天井を見ながら口を開く。



「私、思うんだよね。

サンタはいるとか、死んだ人は天国にいくとか、よくもまあ、平気な顔して子供に言えるなって」



「それは仕方ないだろ。

子供には夢を見させなきゃ」



「覚めることがわかっている夢を見るって残酷なことじゃない?

だからね、私はフィクションだとかの空想上の物語は大嫌い」



「それは………」



「あとさ、よく、『信じれば、頑張れば夢は必ず叶う』みたいなこと言う人いるでしょ。

私、あれも大っ嫌い。

ああいうの聞いてるとね、正直ふざけるなって言いたくなる」




吐き捨てるように言う雨宮。


寝そべっているせいか、雨宮の顔がよく見えないのだが、多分こいつの顔は歪んでいるのだろう。



「世の中にはさ、どんなに望んだってそこにたどり着けない人がいるのに、何でそんな無責任なことが言えるの?

結局は自分の成功を美化したいだけなんじゃないの?」



雨宮の言葉には憎しみがこもっていた。



本気の声。


俺は初めて雨宮の本音を聞いている、そんな気がした。
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