妹なんていらない
一通り話し終えて、雨宮は起き上がり、肩をすくめた。




「ま、こんな感じで大人が嫌いなわけ。

高橋くんは思わない?
大人って汚いって」



「それは………」




どうなんだろうか。


たしかに汚い大人がいて、みんな少なからず子供に嘘をつく。



でも、それは優しい嘘であって、決して悪いことじゃないと思う。


嘘が全て悪いわけじゃない。


そう思うのは間違いなのだろうか。




「俺は………たしかに汚い大人はいると思う」



「でしょ?

だから私は………」



「でも、全ての大人が悪いわけじゃないだろ。

俺はついていい嘘だってあると思う」




雨宮が眉をひそめた。



「ついていい嘘?

何それ………あるわけないよ、そんなの」



「あるだろ。

子供をやる気にさせる、元気にするようなのが」



「…高橋くんはおもしろいことを言うね。

そんなの存在しない。
この世は嘘ばっか。
そして、汚い………」



「お前の考え方は一方的すぎる。

もっと大人になれよ」



「だから、大人になんかなりたくないって言ってるでしょ………

何でわかんないのかな………」



雨宮の口調には明らかないらだちが込められていた。
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