妹なんていらない
雨宮はベッドから立ち上がると、髪をさらっとなびかせた。



ほんのりと甘い香りがして、急に雨宮が色っぽく見える。




「はあ………

高橋くんは、私を理解してくれるんじゃないかって思ってたのに」



ため息をつき、憂いを帯びた表情をする。


そして、雨宮は俺を見るとクスッと笑った。



「高橋くんは、私と違って大人になりたいんだね………」



「え?」



ドサッ!




次の瞬間、俺は雨宮に押し倒されていた。



「お、おい…

いきなり何すんだよ…?」



「私はね、大人になんてなりたくない。

本気でそう思うし、高橋くんもそうであってほしかった」



口元に笑みを浮かべながら淡々と話す。


おかしい。


何でこんな体勢になってんだ。


何でこんな状況でこいつは笑っているんだ。




「たしかに私も高橋くんも、あと二年したら大人の仲間入り、そうせざるを得ない。

でも、だったらさ………」



覆い被さるようにして倒れ込み、耳元で囁かれる。



「二人で先に、大人になっちゃおうよ………」
< 297 / 317 >

この作品をシェア

pagetop