妹なんていらない
俺の服をつかんでいた手がゆっくりと離れる。



美波は顔を見せまいとしてか、俺に背を向けた。


そんな美波の背中を見ながら、俺は言葉を探した。



美波が何故あんな顔をしたのか、それはわからない。


あえて言うなら、自分の知らないところで近しい人間がそのような関係になっていたことに驚いたのかもしれない。



なら、誤解を解くか?


いや、そうしたら何も変わらない。


また、美波が怒るだけだ。



なら、どうすれば…




「………いつまでそこにいるつもり?」



背を向けた美波が言葉を発する。


疲れ切った声に、俺は何も返せずにいた。



「早く出てってよ…

それで、薫と仲良くしてればいいじゃない…」



「だから、それは………」



途端、振り返り、涙目になった美波に睨まれた。



「………っ!!!



出てって!!!

私の前から消えてよ!!!
私を一人にしてよ!!!」



あまりに大きな美波の声に、俺は思わず圧倒された。


体が勝手に後退を始める。




待て。

待てよ。


何で足が勝手に下がるんだよ。


俺はまだ、何も………



「出てって…よ………」



力のない言葉に俺はとうとう部屋から出てしまった。




そして、部屋を出て気づく。



俺は、兄として、最低なことをしてしまった。





ああ、そうか。


俺は、美波を傷つけたんだ。
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