妹なんていらない
「いや…まあ………」



俺は雨宮から視線をそらしながら言葉を探した。


今さっきの出来事だけに記憶があまりにはっきりしていて困る。


以前、美波が溺れたときにキスらしきものをしたことがあったが、まともにしたのは初めてだった。



いや、正直これはまずいだろ。


あんなことを平然とやれる世の中の男女はすごいと思う。


頭がぼーっとするし、心臓がやたら鼓動するし。



「高橋くん?」



「へ?」



「何でいきなり頭をかいたり、うなだれたり、首を振ったり、顔を真っ赤にしたりしてるの?」



おいおい…


自覚なくそんなことしてたのかよ俺は………




「いや、その………


………ごほん。

と、とにかく!
あれはなし!!
なかったことにしよう!!」



「え?」



雨宮が首を傾げる。


うう、一発で理解するとは思っちゃいないが、これはつらい。



「あれは事故ってことにする。

だから、俺はお前を怒らない。

えと…つまり………



………お、お互いのために忘れよう」



ああ、何を言っているんだ俺は。


たしかにあんな記憶は今すぐ抹消したいが、こいつの無茶苦茶な言動をあっさり許していいのか?
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