必要性
「…相変わらず、へったくそなのな」
彼が私を馬鹿にしてるのが、分かる。笑っているのも分かる。
けど、いまだに恥ずかしくてキス直後に彼の顔を見ることが出来ず、私はいつも直後を彼の胸におでこをくっつけて過ごすのだ。
なので、反論する余地もない。
私が普段の数十倍もしおらしく、女々しい態度をとっていると、彼は私にとって驚愕の一言を発した。
「琶乃、お風呂入ろう?」
……………ハノ、オフロハイロウ?……“ハイロウ”?
「はっ!?ちょっと待って!!“入ってこい”じゃなくて“入ろう”!?」
私が男なら、この瞬間、百年の恋も覚めるだろう…。