出会う確率の方程式
「よかった…」

何がよかったのか…。

彼は胸を撫で下ろすと、再び視線をグラウンドに向けた。

そのまま、しばらく時は流れた。

どれくらいかはわからないし、そんなことに意味はない。

「あのお…」

あたしは思いきって、沈黙と言う刻から一歩前に出た。

だけど、その一歩がとても重く感じられた。

彼の目線は、変わらない。

あたしはゆっくりと息を飲み込むと、口を開いた。

「あなたは、この学校の生徒じゃないですよね。なのに、どうしてここにいるんですか?」

あたしの問いかけに、彼は振り向き、ゆっくりと微笑んだ。

「君がいるからさ」

彼は当然のように、そう言った。
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