桃色ドクター
「うわぁぁ・・・・・・ん・・・・・・」
瀬名先生はしゃがんだまま、私の頭を抱きしめて、私のおでこに自分のおでこをくっつけた。
「香織・・・・・・」
初めて名前を呼ばれた。
でも、とても自然だったせいで、今までも呼ばれていたような気がした。
「話が・・・・・・ある」
私は、瀬名先生の体から離れた。
瀬名先生は、別れの言葉を言いに来たのだと感じた。
涙を拭いて立ち上がり、玄関の鍵を開けた。
ドラマのような再会に涙を流した自分が恥ずかしくて、鍵を開ける手がうまく動かない。
「逃げるなって」
後ろから私の手を握る瀬名先生。
ますます鍵が開けられない。