桃色ドクター
「瀬名先生、私に気があるような素振りしてたくせに」
受付嬢は、涙を流すのかと思うくらいの名演技。
「仁……職場の女の子に色目使ってたなんて」
婚約者も、あきれて、目頭を押さえる。
私は、2人の姿をまじまじと見ながら、どうすればいいか考えた。
私は、ただ仁ノ介が心配で……
だって、仁ノ介はがっくりと肩を落とし、母性本能をくすぐる寂しい表情をしている。
頭をなでなでして、ぎゅって抱きしめてあげたくなる。
「気のある素振りなんてしたかなぁ、俺」
ボソッとつぶやく仁ノ介。
「私が疲れている時に、肩をもんでくれたこともある。悩んでいるときに、相談に乗ってくれたり……」
それって、別に気のある素振りとは言えないんじゃない?
でも、肩をもむってちょっとやりすぎだよ、仁ノ介。
仁ノ介ほどかっこいい医者に肩をもまれたら……
そりゃ期待しちゃうよ。